昭和生まれの私にとって、住んでいる場所の近くには懐かしくて思い出深い場所がいくつかあります。その場所は昔のままの面影を残しているところはなかなか少なくて、今の時代に対応した新しい趣、建物、に変化しているのが常です。母が生きていた頃よく聞いた話では、東京も戦争で多くの建物がなくなり、彼女にとって大切な建物や思い出は全て消えてなくなってしまったことを、悲しそうに話していたものでした。
そんな状況の中でも、私が子供の頃、時々家族で食事に行った場所の一つが目黒雅叙園。畳の部屋で食べた中華料理や、部屋中に描かれた絵画、彫刻に囲まれたその斬新さに驚きながらも(笑)楽しい時間を過ごしたことを思い出しました。
何故、急にそんなことを思い出したのかというと、、、
先日ある方からいただいた、この目黒雅叙園の企画展、百段階段と花をテーマにした七つの部屋に描かれている四季のお花を楽しむ会に出かけたからです。その百段の階段と、七つのお部屋は子供の頃、両親と一緒に観たあの食事の場の面影そのまま。床の間の作り、日本画の持つ美しくて繊細な色は久しぶりに五感を刺激してくれる素晴らしいものでした。
畳を踏みしめ、百段階段(実際は99段でした)を上る楽しさ、そして一部屋ごとに感じるその懐かしくて、華やかな色に圧倒されながら、タイムスリップ。日本人であることが嬉しい、懐かしいと感じる素敵な時間を過ごすことができました。子供の頃見た時には、正直言ってその画家の思いや一つ一つの作品に込められた物語など、何もわからなかったけれど、この歳になって訪ねてみると、同じ絵でも、全然違うように感じる自分がいてとても新鮮でした。
昭和初期の、才能あふれる作家の作品に、心が癒されたと同時にドキドキしました。
着物で来ている方が多いのもなんとなく納得できた、、、そんな特別な場所。
母が生きていたら、なんというでしょうか。
今だからこそ、一緒に来たかった、そんな場所でした。
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